内藤 礼 / Rei Naito

内藤礼《color beginning》2021年、紙にアクリル絵具 (c)Courtesy of Taka Ishii Gallery

楽土庵のライブラリーに配されているのは、現代美術家・内藤礼の絵画『color beginning』(2点1対作品)と
小さな木彫の《ひと》。

2020年から内藤が取り組んでいる『color beginning』シリーズは、作家の意識からできるだけ離れ、純粋に色と出会おうとして生まれた作品です。色彩が顕われる瞬間が紙の上に出現するその様は、あらゆるものが「分別」されていない状態、仏教で言う「如」や「不二」の世界から「生」が立ち現れてくる瞬間でもあります。その「生」が決して、如の世界から隔てられていないことも感じられることで、静かな喜びに満たされます。
その私たちを、「きぼうのほうに向く《ひと》」が静かに見守ります。

かつて、アズマダチの家には、信仰コミュニティ「講」が集まる空間や仏間があり、「大いなるもの」につながる場所が内包されていました。内藤の作品が展示される「ライブラリー」は楽土庵の「聖(ひじり)空間」と言えます。彼女の作品が、観る人の意識を「わたしを超えた存在」へと導くからです。

内藤 礼
1961年広島県生まれ。現在東京を拠点に活動。
1985年武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科卒業。
1991年、佐賀町エキジビット・スペースで発表した「地上にひとつの場所を」で注目を集め、1997年には第47回ベネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本館にて同作品を展示。
「地上に存在することは、それ自体、祝福であるのか」を一貫したテーマとした作品を手がけている。
これまでの主な個展に「みごとに晴れて訪れるを待て」国立国際美術館(大阪、1995年)、「Being Called」フランクフルト近代美術館企画、カルメル会修道院(フランクフルト、1997年)、「すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している」神奈川県立近代美術館 鎌倉(神奈川、2009年)、「信の感情」東京都庭園美術館(東京、2014年)、「信の感情」パリ日本文化会館(パリ、2017年)、「Two Lives」テルアビブ美術館(テルアビブ、2017年)、「明るい地上には あなたの姿が見える」水戸芸術館現代美術ギャラリー(茨城、2018年)、「うつしあう創造」金沢21世紀美術館(石川、2020年)がある。

パーマネント作品に、「このことを」家プロジェクト「きんざ」(香川、2001年)、「母型」豊島美術館(香川、2010年)。受賞に、日本現代藝術奨励賞(インスタレーション部門、1994年)、第一回アサヒビール芸術賞(2003年)、第60回毎日芸術賞(2018年)、第69回芸術選奨文部科学大臣賞(美術部門、2019年)。

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